25周年企画
ポコペン舞子『いちど会おう』レビュー
公演日時
2025年11月16日(日)14:00/18:00
会場
神楽坂セッションハウス
出演者情報
小山綾子、川端慈、杉田亜紀、箕島桂、宮崎喜子
タタミスタジオのタムラです。今回、ハタチのポコペン舞子を知る私が25年後のポコペン舞子作品を勝手にレビュー致しますので、ご興味がある方はお読み頂ければ幸いです。
『いちど会おう』——時間をまとった身体たちと再会するという何か、
ポコペン舞子25周年企画『いちど会おう』は、単なる思い出的記念公演ではなかった。
それは、25年間という時間を悩んで苦しんで面白がってきた仲間が、身体と心そのもので紡いで再びひとつの空間で共振する「再会の儀式」のように、確かめながらはじまった。
舞台に立つポコペンは、かつて20歳で活動を始め、いまや45歳になり、再び集まって踊り始めた。その時間の重みは、振付や構成以上に、身体の佇まい、呼吸、沈黙、そして目線の在り方に舞台上で深く刻まれていた。
「再会」というテーマの内側で踊る“時間というレイヤー”
『いちど会おう』という言葉は、単に久しぶりに会う、という意味だけではなく、
「かつての自分と会う試み」「あしたの自分と会う試み」「互いの時間にふれあう試み」という、多層的な再会の試みを感じさせた。舞台の中で交わされるダンサー同士の微細な視線、ふれあい、ぶつかりあいは、別々でも長く活動してきた身体同士にしか生まれない記憶の共鳴のように思えた。そこには若さの勢いではなく、歩んできた道のりの分だけ増えた「余白」や「間」が、新たな輪郭を生んでいた。
コンテンポラリーダンスって何?を自分や他人に問い続けながら踊り続ける。という強味。
ポコペンのダンスは身体能力の高みを目指す方向性よりも身体から自然に表れる非行為的なコミカルさによる表現が魅力だろう。その強味が、45歳になった事で、さらに作品に深みを与えていると感じる。
また変わりゆく身体そのものを作品の素材として差し出す勇気を持っていた、それは年齢を重ねても踊るとは、「老い」を隠すことではなく、むしろ変化した身体で表現を更新していくという創造の持続である事に気づいたのだと思う、それはそれで、とても苦しい作業だっただろう。しかし、継続したという事実は、ダンスが単に消耗する身体表現ではなく、人生の時間を携えて進化し続ける表現であることも気づいたのかもしれない。
観客が体験するのは、身体表現のみならず、思い出を共有するドラマか?
『いちど会おう』を見て強く感じたのは、ダンサーの身体表現を見ているようでいて、実は、積み重なった時間を感じさせられているということだ。
仲間と再会するという表層のテーマの奥で、観客と自分自身を再会させる作品でもあった。20歳の頃にあった、自分から湧き出る、失われた感情、置き去りにしてきた思いや、意味もなく不安な思い、意味不明な行動や何をやっても面白くなる感覚、不条理な心理状態等々、それらが彼女達の現在の身体表現と共鳴するように呼び起こされる。
『いちど会おう』という呼びかけた先は、彼女たち同士に向けたものでもあり、観客に向けたものでもあり、観ている人たちが忘れていた過去の自分に向ける言葉でもあるように思えた作品だった。
タタミスタジオ代表タムラ


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