2015年9月19日土曜日

2015年9月12日(土)「深海と音」のレポート



まず、会場に入った時、
ステージと客席の手が届きそうな距離感に驚いた。

水の中を連想させる幻想的な映像と音の中で、
吊るされた布が存在感をもって浮いている。
いきなり現実とは違う空気に包まれた気がした。
始まりの合図、鐘が鳴る。

水のような映像が広がり、目の前は青い世界。
不思議な場所に来た気分。

人が歩いてきて、布に手をかけ動き始める。
その人にも青い映像が掛かっていることで、
私たちと同じ人間ではなく、「青い世界の生き物」という演者であることをより認識した。

布に足を掛け、上ったり、包まれたり。
人の動きと連動して変化する布が、柔らかくて、強いものなのだと感じた。

動きがゆっくりだからなのか、演技を見ているというよりは、
その人がそこで動いているのを、ただ眺めるような感覚になる。

青い世界を外から覗いているような、水族館で水槽を眺めているような、そんな感覚。
普段、劇や映画を観ていると、次はどうなるのかと頭で考えることが多いが、
逆に今回は思考が頭から離れていってしまい、
ただその流れを感じる、ということで成り立っている。

一つ一つの演技に意味はあるのだろうけど、答えはないような気がするし、
答えを見つける必要もない気がする。
楽しそうだな。表情が穏やかだな。歌う声が澄んでいるな。
コントラバスと息が合っているな。深く響いているな。
このような単純な感覚が湧き出ては流れていく。

このストーリーがどうなっているとか、狙いは何なのかとか、
そんなことから完全に切り離された空気の流れ。
映像と、空中での演技と、歌と、コントラバスと、ホーメイと、鐘と。。
全部が共鳴し合いながら、溶け合いながら、独特の空気感を纏っている。
あっという間に2時間が経っていた。
終わった後は瞑想後のように頭がすっきりしていた。
心地よくて何回か寝てしまいました。。これは驚き。
きっと見る人によって、感じることが全然違うんだろうなと思った。
演技の細部に目をやる人、音楽に聴き惚れる人、全体の空気を感じる人。
その時の自分が何を求めているのか。それが作品を通して自分に教えてくれる。

見る人が全員同じ方向に向かっていない、というか向かわないように
曖昧にしている部分がきっと多いんだろうなと。
それが演劇や映画などと違うアート的な要素なのだと感じた。

もし可能なら、客席ではなくて、地べたに座ったり寝転んだりして、
自由な角度から体感してみたいなと感じました。

文:松村(インターンシップ)

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