みなさんはテーブルの角でつま先を打った時や、頭をドアに思い切りぶつけた時に思わず「クソ!」などの汚い言葉を言ったことはないだろうか? 行儀上あまりよくない言動だが、その言葉には意外な効果があった。そう、それは鎮痛効果。
何か痛みを感じた時に、クソ、バカなど罵る(ののしる)言葉を言うと、痛みを低減できるのだ。そして、その効果は普段罵らない人ほど効果が大きいらしい。
これを発表したのはキール大学の研究者たちで、彼らは71人の若者を対象に次のような実験を行った。
1)71人のうち、1日に罵り言葉を10回以上言わない人をAグループに、1日に最大40回まで罵り言葉を言う人をBグループにする。
2)Aグループ、Bグループの全員に氷水に手を入れてもらい、可能な限り手をつけておくよう伝える。
3)1回目の実験では罵り以外の言葉を言いながら、2回目の実験では好きなように罵り言葉を言いながら、手を氷水につけてもらう。
すると、Aグループは1回目より2回目の実験の方が最大45秒まで長く氷水に耐えることができた。その一方でBグループは、2回目の実験では1回目より10秒だけ長く耐えられたという結果に。
今回の結果により、罵る行為は痛みを抑えるエンドルフィンを脳内で分泌させることが示され、研究チームリーダーのリチャード・ステファンズ博士は「罵るという行為は『逃走・闘争反応』(人がストレスを多く感じた時に、体で起こる心拍数増加、血圧上昇などの反応)に似たストレスに直面した時の感情的反応を引き起こします」と述べた。
また、実験結果が示しているように、普段バカやアホなどの言葉を使わない人ほどそれから得られる鎮痛効果は大きい。言い換えるなら、罵り言葉は強烈な痛みを感じた時のためにとっておいた方がいいということだ。
ステファンズ博士は罵り言葉の鎮痛剤としての使用は、応急処置の時、もしくは小さなケガを負った時だけに控えるべきで、医療全般には反映させるべきではないと考えているようだ。現に博士は次のように語っている。
「罵ることは無礼な行為であり、周りにその人は乱暴者だと思わせてしまいます。そして、医療においてその使用を提唱していくことは、それが解決するより多くの問題を引き起こすと私は考えています。よって、医療においては従来どおりの鎮痛剤を使用していくべきです」
ステファンズ博士の言うように、罵り言葉はマナー上よくないものなので、使用する際は場所に気をつけて言った方がいいだろう。また、むやみやたらと使っていると、周りにけんかを売っていると思われて、さらなる痛みをもたらすかもしれないのでご注意を!
(文=田代大一朗
参照元:DailyMail(英文)